化学品や医薬品が人間の歴史に及ぼした影響について書かれている本の紹介です。
構造式のオンパレード
Sony α200 × DT30mm F2.8 Macro SAM
本を紹介しているサイト「HONZ」に載ったのを見て思わず購入した本です。
スパイス、爆薬、医薬品 世界史を変えた17の化学物質 P.ルクーター J.バーレサン 著 小林力 訳
世界史を変えた化学物質
Sony α200 × DT30mm F2.8 Macro SAM
あらかじめ書いておきますが、ワタクシは文系人間なので化学のことは高校生で習う程度の知識しかもっていません。それでも大学受験時のセンター試験の化学の成績は9割以上です(自慢 笑)。
実際、化学メーカーに勤めていることもあり、化学に対するアレルギー的なものはありませんし、どちらかと言えば好きなほうです。
しかし、この本に関しては、化学が嫌いな人でも意外と読めるんじゃないかな、というのがワタクシの感想です。確かに扉写真のように中には構造式が結構出てきます。ですが、この本では細かい構造式を覚えたりする必要はないんです。
この本のポイントは題名にも記載されているように、「化学物質」と「世界史」のお話なのです。
少し内容の話になりますが、たとえばこの本で最初に取り上げられているのは「グローブ」です。カレーや肉料理に使われるスパイスですが、このグローブをめぐって大航海時代が始まった、というところから話が始まるのです。どちらかと言うと世界史でしょ?
そこから、なぜヨーロッパの人たちがそれほどまでにグローブを求めたのか、その理由をグローブの主成分である「オイゲノール」という化学物質から考えています。
そして、そのオイゲノールの構造式と見た目でよく似たイソオイゲノールを含むナツメグ、ピペリンを含む胡椒へと話が展開しています。
また、大海賊時代大航海時代が始まったことで出てきた「壊血病」に話は移り、そこからアスコルビン酸(ヴィタミンC)の話に・・・といった具合に世界史の流れとその裏側に見える化学物質を解説してくれている本です。
化学物質(特に有機化学)や世界史に興味のある方だったら特に面白いと思いますし、化学が苦手な方も生活に近いところから化学物質を見ているので、導入編としてはいいかもしれません。砂糖や化学繊維の話も出てきますし。
というわけで、文系と理系の間を繋ぐような本になっています。序章にすごく分かりやすい言葉が書いてあるのですが、今までよく見られたような「化学の歴史ではなく、むしろ歴史における化学を描」いています。
ワタクシは、上にも書いたように化学アレルギーを持っていないので、構造式が出てきても気になりませんが、元々化学嫌いの方だと抵抗があるかもしれません。でも、そんな方は出てくる構造式を全く無視して読み進めても問題ありません。訳者あとがきにも書いてありますが、原著の段階でも日本語訳本の段階でも構造式を入れるかどうか、かなり議論された本のようです。そもそも割愛される可能性があった構造式なんですから、気にせずどんどん読んでも問題ないわけです。
逆に化学が大好きなひとも、学問として学ぶ化学とはひとあじ違った側面からそれぞれの化学物質を見ることができておもしろいんじゃないでしょうか。
ぜひ、化学に抵抗がある方も、歴史に抵抗がある方も、一度手にとって見てはいかがでしょうか。
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